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ユニコーンライオンの血統背景-何故貴重と評されるのか

 三隅です。

 

今回はユニコーンライオンの血統について。 血統に加え、よく話題に上がるユニコーンライオンの血統的希少性について初歩の方にもわかりやすいよう解説します。

お伝えしたいことがたくさんでnetkeibaの投稿では字数がオーバーしてしまうため、これまでのブログを非公開にし、競馬向けにシフトしました。

 

 

ユニコーンライオンの血統背景]

キーワード:Scat Daddy、クールモア

 

 ユニコーンライオンの父【No Nay Never−ノーネイネヴァー】。

仏・モルニ賞(2歳G1・芝1200m)の勝ち馬です。

早逝した名種牡馬Scat Daddyの2011年度産駒。母の半兄はG3馬。

と今となれば良血と言えますが、Scat Daddy産駒はまだデビューしたばかり。かつセリの頃のNo Nay Neverは馬体の見目があまり良くなかったため安値で取引されました。

共同出資者にはアイルランドの大オーナーブリーダー・クールモアが1枚噛んでいます。

 米国で生産、デビュー。2歳時に欧州に遠征しモルニ賞を勝つも、故障のため現役で3歳を迎えることなく種牡馬入りしました。

 

 No Nay Neverの代表産駒としては、まず英・ミドルパークS(2歳牡G1・芝6ハロン)とジュライカップ(3歳以上G1・芝6ハロン)を勝ったTen Sovereigns。クールモアで種牡馬入りし、産駒が今年からデビューしていますね。

また、牝馬Alcohol Freeは古馬混合含むG1・4勝。矢作厩舎のバスラットレオンなどとも対戦しており耳馴染みがあるかと思います。

混合含むG1を4勝した牝馬というと2021年宝塚記念ユニコーンライオンを破ったクロノジェネシスが思い起こされますね。うふふ。

 他には2022年のモルニ賞、ミドルパークSを勝ったBlackbeard、愛フェニックスS(2歳G1・芝6ハロン)勝ち馬Little Big Bearなど。

 主に2歳3歳の短距離G1を中心に勝ちながらも、前述のAlcohol FreeはマイルG1勝ち、マイルのBCジュベナイルフィリーズターフを勝ったMeditate、そして中距離重賞2勝ユニコーンライオンなど短距離や若馬に限らず活躍馬を出しています。

 早熟で短距離に結果のある馬ですので、多くは快速な繁殖牝馬がつけられています。短距離馬が多いのはこのためですが、マイル以上も結果が出ているところを見ると肌の適性を引き出すことにも長けていると考えられます。

 ちなみに、No Nay Neverの半弟・Renatは1戦0勝ながら英国で種牡馬入り(現在はチュニジア)しており、産駒のレヨントゥソレイユ(グリーンバナナズの2021)が日本にいます。競走馬名までついていますが音沙汰がありませんね……。

追記:美浦の和田厩舎に入厩していましたね。本日新馬戦でデビューしました。8着でしたが前目につく競馬でしたね。成長が楽しみです。(2023年12月28日)

 

 母【Muravka−ムラフカ】

G1を6勝した名馬High Chaparralの2008年度産駒。

未出走で繁殖入り。兄弟や近親を見る限りは中距離ダートに勝ちがあります。

2012年度産駒に仏・モルニ賞勝ち馬The Wow Signal、2016年度産駒にユニコーンライオン。

今年(※2023年)の5月には2021年度産駒の牝馬Matrikaがカラ競馬場新馬戦を勝利しています。同年7月には愛G2・アーリースタッドSを制覇。

2013年産駒Wowchaからは英G3の2着があるBreegeが出ており活躍馬の出る牝系ですね。

牝系はF8-h。h分岐は中々の大ファミリーを築いており、シンボリクリスエスキングヘイロー、American Patriot、Yoshidaと同じファミリーにあたります。

 母の父High Chaparralは説明不要の名馬ですね。今日の欧州競馬、クールモアスタッドを形作った大種牡馬Sadler's Wellsの産駒。そのなかでもHigh Chaparralは14戦無敗のFrankelや凱旋門賞Montjeuと並ぶ代表産駒と言えるでしょう。

High Chaparralは13戦10勝、2着1回3着2回うちG1を6勝と輝かしい戦績を残しています。英愛ダービー勝利にBCターフ連覇、アイリッシュチャンピオンステークスと勝ったG1も錚々たるものです。

今年、ディープインパクトのラストクロップ・Auguste Rodinが2016年Harzand以来の英愛ダービー制覇を成し遂げたことが記憶に新しいでしょう。Harzandの前は2002年High Chaparralに遡ります。Auguste Rodinは年内引退を示していますが、そのまえにBCに出走するそうです。今年は何かとラッキーな年ですね。

High Chaparralは愛国クールモアスタッドで種牡馬入りし、英G1サセックスSクイーンアンSの勝ち馬Toronado、英G1プリンスオブウェールズSを勝ったFree Eagleを生産していますが、シャトルとして供用されたNZ、豪国で真価を発揮しています。2006年産のSo You Thinkが豪州でコックスプレート連覇などを含むG1・5勝を挙げ欧州移籍。合計でG1を10勝しています。

 

 余談ですが、父No Nay Never母父High Chaparralの配合はユニコーンライオン含む2頭が生産されています。

もう1頭のArmorは英・モールコムS(2歳G3・芝1000m)を勝ち、モルニ賞で4着、ミドルパークSで3着と結果を残しています。つけられるうちにHigh Chaparral肌にNo Nay Neverをつけて欲しいものです。

 

 それではユニコーンライオンの血統が貴重と評される理由にいきましょう。

端的に言えばNo Nay NeverをはじめとしたScat Daddy産駒の希少さと、世界最大の生産馬主クールモアによる後継種牡馬囲い込みがその要因です。

 【Scat Daddy−スキャットダディ】は米国産馬。3歳までに米シャンペンS(2歳G1・ダ8ハロン)、フロリダダービー(3歳G1・ダ9ハロン)を勝利するも本命視されたケンタッキーダービーで軽度の故障、引退しクールモアの米国傘下であるアシュフォードスタッドで種牡馬入りをしました。

初年度産駒から2頭のG1ウィナーを出し、勝利数としても米国フレッシュマンサイアーランキングで1位。8年間で18頭のG1馬を出しています。その中には高松宮記念を勝ったミスターメロディや、米国三冠馬Justifyなどもいます。

その目覚ましい活躍のさなか、2015年に急死します。

 

 遺された産駒たちも種牡馬として供用され始めた頃で、父系Scat Daddy系が確立される前夜のことでした。エンドスウィープドゥラメンテのような感じですね……。

Scat Daddyの仔出しに惚れ込んでいたクールモアは、莫大な資金力でScat Daddyの産駒、そしてその産駒に至るまで糸目を付けず自らの手中におさめようと奔走しているのです。現在後継種牡馬の約半数がクールモアの傘下にあるとされています

 

  Scat Daddy系の産駒の特徴として早熟性とスピードがあります。これがさらに欧州市場での価値の高さを押し上げていると言えるでしょう。

仏、愛、英をはじめとして現代の欧州競馬は(特に牡馬で)早い時期にデビューさせ3歳G1を取り、引退繁殖入りというルートが少しずつ形作られています。スピードの豊富さは2歳3歳に多い短距離競走に力を示しており、この流れの中で早熟なScat Daddyの血はピタリとハマるわけです。

 ユニコーンライオンはそのような状況下でタタソールズオクトーバーセールに出品されました。

クールモアと矢作調教師の壮絶な(札束の)叩き合いの末、勝った矢作師はライオンレースホースとともに2億円馬ユニコーンライオンを日本に連れて帰ったわけです。そこにあるのは日本にScat Daddy後継をもたらすという使命です。

 

 日本ではJBBAが2023年シーズンからScat Daddy産駒Caravaggioの導入をスタートしました。

ミスターメロディやユニコーンライオンだけでなく導入前に輸入されたCaravaggio産駒のアグリも重賞勝ちがあり第一線で活躍していることから、スピードが豊富でかつ早熟で、日本の馬場にも適正を持つこの血統は日本の競馬界を変化させる可能性を十分に孕んでいると考えられます。

 

次回は血統解説か探訪記の予定です。

 

 

〈参考文献〉

https://db.netkeiba.com/horse/ped/2016110103/

https://www.jbis.or.jp/horse/0001271018/

https://world.jra-van.jp/db/horse/225130/

https://world.jra-van.jp/db/sire/H1001908/

https://world.jra-van.jp/db/horse/H1014709/

https://www.racingpost.com/profile/horse/839221/no-nay-never

http://lunameiba.blog.enjoy.jp/.s/jp/HighChaparral.html

http://blog.livedoor.jp/organa_jpn/archives/52538402.html

http://blog.livedoor.jp/organa_jpn/archives/52535149.html

https://www.jairs.jp/sp/contents/w_news/2017/7/3.html

(すべて2023年10月20日最終閲覧)

 

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